東京高等裁判所 平成元年(行ケ)86号 判決 1991年5月20日
富山県中新川郡上市町三日市一九番地
原告
平野主一
右訴訟代理人弁理士
加藤紘一郎
牧レイ子
牧哲郎
東京都千代田区霞が関三丁目四番三号
被告
特許庁長官 植松敏
右指定代理人
酒井正己
吉村宗治
後藤晴男
松木禎夫
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた判決
一 原告
1 特許庁が、同庁昭和六三年審判第一一〇三九号事件について、平成元年二月一六日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「横型精穀機における除糠装置」とする考案(以下「本願考案」という。)につき、昭和五五年八月五日に実用新案登録出願をしたところ、昭和六三年四月七日に拒絶査定を受けたので、同年六月一七日、これに対し審判の請求をした。
特許庁は、同請求を同年審判第一一〇三九号事件として審理した上、平成元年二月一六日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年三月二九日、原告に送達された。
二 本願考案の要旨
下部を吸引ファン6に通ずる集糠用覆箱5の上部に吸気口8を設けて六角筒形の糠抜筒1を包み、しかして糠抜筒の上位の隅角部における左右の傾斜面1a、1aと吸気口8との間に空室Sを形成すると共に前記左右の傾斜面の下端外側と覆箱の内側との間には空気の通過を妨げる狭小な間隙Mを形成して成る横型精穀機における除糠装置。(以下本願考案につき本判決別紙本願図面参照)
三 本件審決の理由の要点
1 本願の出願の日は、一項のとおり、本願考案の要旨は二項のとおりである。
2 これに対して、拒絶査定の拒絶理由に引用され、本願考案の出願前に国内において頒布された刊行物である実公昭三五-一四五七号公報(以下「引用例」という。)には、下部を吸引ファンに通ずる漏斗の上部の外枠壁の天井壁に吸気口を設け、また、天井壁に空気誘導壁を装架して外枠壁、天井壁、空気誘導壁及び漏斗により円筒形の多孔壁精穀筒を包み、しかして多孔壁精穀筒の上位の円筒面と吸気口との間に空室を形成すると共に前記円筒面の外側と空気誘導壁の内側との間には空気の通過を許容する狭い間隙6を形成して成る横型精穀機における除糠装置が記載されている。
3 そこで、本願考案を引用例記載の考案(以下「引用考案」ともいう。)と比較すると、引用考案の「外枠壁、天井壁、空気誘導壁及び漏斗」、「多孔量精穀筒」は、本願考案の「集糠用覆箱」、「糠抜筒」にそれぞれ相当するから、両考案は、下部を吸引ファンに通ずる集糠用覆箱の上部に吸気口を設けて筒形の糠抜筒を包み、しかして糠抜筒の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成すると共に前記外側面と集糠用覆箱の内側との間には狭い間隙を形成して成る横型精穀機における除糠装置の構成の点で一致し、次の二点の構成で相違する。
(一) 糠抜筒の形状が、本願考案は、六角筒形であるのに対し、引用考案は、円筒形である点。
(二) 糠抜筒の上位の外側面と集糠用覆箱の内側との間に形成される狭い間隙が、本願考案は、空気の通過を妨げるものであるのに対し、引用考案は、空気の通過を許容するものである点。
4 これらの相違点について検討する。
(一) 相違点(一)については、本願考案は、引用考案の円筒形の糠抜筒を単に本願考案の出願前に周知技術(たとえば実開昭四八-七九七五三号公報、実開昭五四-三九三六八号公報及び特公昭五四-二二八九七号公報参照)の六角筒形の糠抜筒に設計変更したものに過ぎないというべきである。
(二) 次に、相違点(二)については、本願考案において、狭小な間隙Mが存在する以上、一部の空気は狭小な間隙を通過し、全部の空気が糠抜筒を通過しないと認めるのが相当であり、また、引用考案において、空気の通過を許容する間隙6が狭い以上、全部の空気が間隙6を通過するものではなく、一部の空気は糠抜筒を通過するものと認めるのが相当であり、そうすると、本願考案と引用考案との間には間隙の広狭の差があるものの、この間隙の広狭の差は、当業者が糠抜筒の内外両側の除糠除熱をどの程度行うかという必要に応じて随意に選定できる事項というべきである。
5 したがって、本願考案は、その出願前に国内において頒布された引用例記載の考案及び前記周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるので、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができない。
四 本件審決を取り消すべき事由
本件審決は、引用例に記載された事実の認定を誤った結果、本願考案と引用考案との対比において両者の一致点でない事項を一致点と誤認し、相違点を看過し(認定判断の誤り第1点)、また、相違点(二)についての判断を誤った(認定判断の誤り第2点)結果、本願考案は、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができないと誤った判断したものであるから、違法として取り消されなくてはならない。
1 認定判断の誤り第1点
(一) 本件審決は、引用例には、多孔壁精穀筒の上位の円筒面と吸気口との間に空室を形成した横型精穀機の除糠装置が記載されている旨認定したうえで、本願考案と引用考案を比較して、両者は糠抜筒(多孔壁精穀筒)の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成する点で一致する旨認定している。
(二) しかし、本件審決が引用考案(以下引用考案につき、本判決別紙引用考案図面参照)の空室として認定した箇所は、引用例の「空気誘導壁7は蝶番18により通気窓4に綴結装架する。」(甲第五号証一頁左欄一五行から一六行まで)との記載及び第4図から明らかなとおり、第2図において蝶番18、18を有する左右の垂直壁により囲まれた部分全体が通気窓4であるから、本願考案の吸気口8に相当し、本願考案の空室Sとは相違する。
本願考案の空室Sは、糠抜筒の上位の外側面と吸気口との間に位置し、しかも空気の通過を妨げる狭小な間隙Mを備えた構成であるから、吸気口より吸入した空気の大部分を糠抜筒の外側面より糠抜筒内に導入する作用を果たす。
これに対し、引用例の通気窓4(本件審決のいう空室)は、その下端開口部の左右に空気誘導壁7を連結し、この空気誘導壁7により形成する左右の通気狭隙6に導通する構成だから、通気窓4の上端開口部より吸入した空気はその全部が下端開口部を経て左右の通気狭隙6に流れ、糠抜筒内には進入しない。
(三) このように、本願考案は、引用考案には本願考案の空室Sに相当する構成を欠くのに、これがあると誤認し、その結果本願考案と引用考案は、糠抜筒(多孔壁精穀筒)の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成する点で一致する旨認定し、一致点でないことを一致点と誤認し、相違点を看過した。
2 認定判断の誤り第2点
本件審決に、相違点(二)についての判断の中で、引用考案において、空気の通過を許容する間隙6が狭い以上、全部の空気が間隙6を通過するものではなく、一部の空気は糠抜筒を通過するものと認めるのが相当である旨認定したが、右認定は誤りであり、この誤った認定を前提として導き出した、本願考案と引用考案との間には間隙に広狭の差があるものの、この間隙の広狭の差は、当業者が糠抜筒の内外両側の除糠除熱をどの程度行うかという必要に応じて随意に選定できる事項というべきであるとの判断も誤りである。
(一) 引用例には、糠抜筒を空気が通過することを示唆する記載は一切ない。
引用考案は、糠抜筒の屋根の面から噴出する糠粉を通気狭隙の通気作用により両側下方に吹掃して、糠抜筒を清潔に保ち、併せてこの通気作用により糠抜筒を空冷するものである。したがって、吸入した空気が糠抜筒内を通過することになると、それだけ通気狭隙の通気作用の減退に通じるから、十分に糠粉を吹掃したり空冷したりできない。
引用考案において、一部の空気が糠抜筒を通過するというのは、引用考案の目的に反した曲解である。
(二) 精穀機には、速度系のものと圧力系のものとがある。
速度系は、金剛砂ロール(精穀転子)を分速六〇〇m以上の高速で回転して、転子表面の研削力により穀粒のぬか層を研削する。その際、精穀転子とこれを囲む精穀筒との精白間隙を広くすると、転子に触れた穀粒が遠心力により転子の表面に対して垂直に起立して穀粒の両端が削られたり折損するので、精白間隙(精穀転子と精穀筒との間隙)は狭い。実際は穀粒の大きさ程度で、一〇mm前後である。
圧力系は、精穀転子を分速三〇〇m以下の遅い速度で回転し、穀粒に圧力を加え、穀粒相互の接触摩擦力でぬか層を取り除く。精白間隙は、穀粒同士が重なり互いに摩擦し合えるように広く形成する。
(三) 本件審決が、一部の空気は糠抜筒を通過すると認定したのは、引用考案の通気狭隙が狭く、かつ糠抜筒が多孔壁であることによるものと思われる。
引用考案は、速度系精穀機のみでなく圧力系の精穀機に関する考案でもあることは認める。
引用考案の精穀機が引用考案図面に示されたような速度系に属するものである場合、精穀転子は高速回転し、精白間隙の穀粒も精穀転子と共につれ回りするから、それらにより転子表面の空気層に遠心力が作用し、起風力を生ずる。加えて、速度系の精白間隙は狭く、穀粒相互の圧力は低くむらがないから、風は糠と共に精白間隙を容易に吹き抜けて、精穀筒の多孔壁の孔から噴出する。したがって、精穀筒の孔の内向きの通気抵抗(精穀筒内に向け外部から通気する場合の通気のしにくさ)は、風が吹き出ない同じ寸法の孔の通気抵抗よりはるかに大きい。
また、糠抜筒の筒壁の孔は、精穀中の穀粒が筒外に漏れ出ないように穀粒の粒径より狭く、しかも精穀運転中は糠抜筒内に穀粒が充満している。
他方、引用考案の通気狭隙には通気窓から流れ込む空気流と逆向きの流れは存在しないから、通気抵抗は精穀筒の孔に比較しはるかに小さい。また、通気狭隙は糠抜筒の面から噴出した糠を下方へ排出する通路でもあるから、長い狭隙の途中で詰まったりしないだけの広さがなければならない。
引用考案の通気狭隙と精穀筒の孔との通気抵抗には寸法の差以上の圧倒的な格差がある。
このように、入口が共通する二つの流路の通気抵抗に著しい差がある場合、吸引空気は通気抵抗の小さい流路に集中して流れる。したがって、引用考案の場合も、通気窓から吸入した空気は通気抵抗がはるかに小さい通気狭隙に集中して流れ、通気抵抗の大きい糠抜筒内を通過することはないと考えるのが技術常識である。
入口と出口が共通し、通気抵抗が異なる二つの流路を想定したとき、出口側から吸気すると、入口から出口に至る気流は、それぞれの流路の通気抵抗に応じて配分されるという一般論は正しいが、その場合の通気抵抗とは流路の断面積の大小ではない。
精穀筒が多孔壁で形成されている以上空気が流入する可能性が全くないわけではない。精穀筒内に空気を流入させるには、精穀筒の孔から吹き出る起風力よりも強い力で精穀筒内に空気を吸い込めばよい。ところが、それに見合うように引用例の吸風管14、15に接続する吸引ファンの動力を強大にすると、必然的に精穀筒の外周に沿って通気狭隙を流れる空気流の速さが速くなる。そうすると、ベルヌーイの法則の影響で精穀筒の多孔壁の外側が内側より一層低圧となるから、空気はますます精穀筒内に流れ込まないことになるはずである。
引用例記載の技術が圧力系にも適用できるからといって、そのことが直ちに引用例の精穀筒に空気が流入することの根拠にはならない。圧力系でも、精穀筒内に空気が流入すればそれだけ通気狭隙を通過する空気量が減り、糠粉を吹掃する作用が減退して考案の目的に反することになるのだから、圧力系に適用した場合にでも精穀筒内には空気は流入しないと考えるべきである。
一部の空気は糠抜筒を通過するとの本件審決の認定は、観念的な憶測に過ぎず、経験則に反したものである。
(四) これに対し、本願考案は圧力系に属し、その精穀転子の回転は遅い。その上、糠抜筒は断面六角形で、その稜角に臨む精白狭隙は特に広い(実際は一五mm)。そして、精穀転子の突条の背面は穀粒相互の圧力が低いから、突条の通過直後に、広い精白狭隙の穀粒密度は他より一層粗になる。
したがって、本願考案においては、吸気口から吸引され空室Sに吹き溜った空気は、糠抜筒の上部左右の傾斜面を貫通して、広い精白間隙中に容易に進入する。
(五) 被告は、引用考案の精穀筒から風が吹き出る以上、その空気は精穀筒の外部から供給されるはずで、引用考案の精穀筒に空気が流入しないというのは誤りである旨主張する。
精穀筒の内から外へ風が吹き出る以上、その空気が精穀筒のどこからか内部に流入することはいうまでもない。
引用考案では、空気は精穀筒の両端開口部、つまり給穀口から穀粒と共に流入するし、また排出口からも一部流入する。
原告が、引用考案の精穀筒に空気が流入しないというのは、空気誘導壁に囲まれた部分、即ち精穀筒の胴周面からは流入しないという意味である。本件審決が、一部の空気は糠抜筒を通過すると認定したのも、糠抜筒(精穀筒)の胴周面を経て内部に一部の空気が流入するという意味であるはずである。
また、被告は、速度系の精穀機においても、精穀転子の起風力に抗して、精穀筒内に気流が流れ込むものが乙第一号証、乙第二号証に示されていると主張する。
乙第一号証、乙第二号証記載のものは精穀筒内に気流が流れ込むようにはなっている。しかしそれらは引用考案とは構造が全く異なる。引用考案には外部の空気が精穀筒内を経由しないでその外側を流れるように通気狭隙が用意されているのに対し、右乙号証にはこのような通気狭隙に相当する構造はない。
原告は、全ての速度系において精穀筒内に空気が流れ込まないと主張するものではなく、引用考案の構造のものの空気の流れについて主張しているものである。引用考案と構造の異なる右乙号証記載のものにおいて空気が精穀筒内に流入することは、引用考案の精穀筒内に空気が流入する根拠にはならない。
更に、被告は、精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行うこと自体は常套手段に属し、たとえ常套手段に属するとはいえないとしても周知である旨主張する。
しかし、精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行おうとすることは技術課題としては周知であるが、その実用化の手段は従来達成されておらず、常套手段に属するとか、周知のこととは到底いえない。
第三 請求の原因に対する被告の認否及び反論
一 請求の原因一ないし三は認め、同四中、後記認める部分以外は争う。本件審決の認定判断は正当であり、原告主張の違法事由はない。
二 認定判断の誤り第1点について
請求の原因四1(一)は認める。
本件審決が、「多孔壁精穀筒の上位の円筒面と吸気口との間に空室を形成する」と認定した「空室」とは、引用例の第2図において、多孔壁精穀筒1の上位の円筒面と天井壁3に開設した通気窓4との間にあり、空気誘導壁7の垂直部分によって画成されている空間を指している。
引用例には「外枠壁2の天井壁3に開設した通気窓4」(一頁左欄下から一三行目)という記載があるとおり、引用例では天井壁に開設された開口部を通気窓と称し、この天井壁に開設した開口部即ち通気窓を通して空気を吸入していることは明らかであるから、この通気窓を本願考案の「吸気口」に相当するとしたことには根拠がある。
そして、本願考案では、吸気口と糠抜筒の上位の外側面との間に形成される空間を空室と称しているのだから、引用考案の第2図に示された、多孔壁精穀筒の上位の円筒面と通気窓(吸気口)との間にある空気誘導壁の垂直部分によって画成された空間を、本願考案の空室に相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
したがって、本願考案と引用考案は、糠抜筒(多孔壁精穀筒)の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成する点で一致する旨の本件審決の認定に、一致点の誤認あるいは相違点の看過はない。
三 認定判断の誤り第2点について
1 本件審決が、請求の原因四2の冒頭記載の趣旨の判断をしていることは認める。
2 本願明細書には、空気の通過を妨げる狭小な間隙Mを設けることにより、吸気口8より吸引された空気の大部分は糠抜筒の穀粒の密度の粗なる上位の隅角部内を経て内部を通過し、残部の空気は糠抜筒の上位の隅角部における左右の傾斜面の上面に押し出た糠を左右の間隙を通して分離するという作用効果が奏される(甲第四号証の二、六頁一五行から七頁一二行まで)旨記載されている。この記載によると、本願考案の「空気の通過を妨げる狭小な間隙」とは、糠抜筒の上面に押し出された糠を空気流により吹掃できる程度の間隙であるといえる。
一方引用例には、糠抜筒外側面と空気誘導壁とで形成される空隙は狭いものであること及びこの空隙の通気作用により糠抜筒の面から噴出する糠が吹掃されることがそれぞれ記載されている。
してみると、両者の「間隙」は、糠抜筒の上面に押し出された糠が空気流により吹掃できる狭小な間隙である点で一致している。
しかるに、本願考案においては吸気口により吸引された空気の大部分が糠抜筒の内部を通過し、引用考案においては吸引された空気の大部分(原告は全部と主張するが)が通気狭隙を通過するという差異が生じている。そして、この差異は両者の間隙の寸法に差があり、この差によって「間隙」の通気抵抗に差が生じることに起因するものといえる。
3 ところで、入口と出口が共通し、通気抵抗が異なる二つの流路を想定したとき、出口側から吸気すると、入口から出口に至る気流は、それぞれの流路の通気抵抗に応じて配分されるのが技術常識であり、通気抵抗の小さい流路には多量の空気が流れ、通気抵抗の大きい流路には少量の空気が流れるのである。これは、本願考案において、相対的に通気抵抗の小さい糠抜筒内部を大部分の空気が通過し、相対的に通気抵抗の大きい間隙Mを少量の空気が通過するという事実に一致する。
今、本願考案の、空気の通過を妨げる狭小な間隙の寸法を連続的に広げていった場合を想定すると、間隙の通気抵抗値は連続的に減少し、間隙の通気抵抗と糠抜筒内部の通気抵抗との通気抵抗比が連続的に変化するため、糠抜筒内部を通る空気の流量は連続的に減少していくものといえる。即ち、間隙の寸法を連続的に広げていくと、糠抜筒内部を通る空気の量は徐々に減少して零に近づいていくのであり、間隙の寸法がある臨界的な値を越えたときに糠抜筒内部を通る空気の量が不連続的に零になるというものではない。
そして、引用考案においては、通気狭隙が狭いものである以上通気抵抗があるはずであるから、空隙を通る流路と糠抜筒内部を通る流路とにはそれぞれの通気抵抗に応じて空気流は配分されており、一部の空気は糠抜筒を通過しているといえる。
したがって、本件審決の、空気の通過を許容する間隙6が狭い以上、全部の空気が間隙6を通過するものではなく、一部の空気は糠抜筒を通過するものと認めるのが相当との認定に誤りはない。
4 引用例の本文には引用考案の除糠装置が速度系にのみ適用できる旨の記載はなく、引用考案は、精穀筒の上面に噴出する糠粉を吹掃することを技術課題、目的とし、このために精穀筒の外部の形状に特徴を持たせたものであって、前記課題は速度系のみならず圧力系にも存するものであり、かつ、引用考案の構成において、精穀転子自体が速度系のものか圧力系のものかは格別の技術的意味を有しないものであることは当業者には明らかであることを勘案すると、引用考案を速度系の精穀機にのみ適用できる技術であると限定的に解釈する理由はなく、引用例記載の技術が圧力系の精穀機に関する技術でもあることは当業者に自明のことといえる。引用例の第2図の8は精穀転子を図面上で表現するためにたまたま速度系の精穀転子の形状を採用したにすぎない。
原告は、速度系の精穀機の精穀転子は高速回転するため転子表面の空気層に遠心力が作用して起風力が生じ、風は糠と共に精白間隙を吹き抜けるから、精穀筒内向きの通気抵抗は、同じ寸法の風が吹き出ない孔の通気抵抗よりはるかに大きく、速度系の精穀筒には空気が流入しない旨主張する。しかし、精穀筒の多孔壁の孔を通って噴出する空気の流れがある以上、それに見合う空気が外部から供給されているはずであり、引用考案の精穀筒には空気が流入しないとはいえない。
引用考案の給穀口又は排出口から精穀筒の多孔壁面に至る流路内には穀粒が充填されており、この流路の通気抵抗は相当に大きいものとなるはずである。したがって、精穀筒の両端開口部からの空気の流れ込みは小さく、精穀筒の内側から外側に向かう気流がもし存在しても、それは、通気窓を通って精穀筒表面から精穀筒の内部に向かう気流を妨げる程の風量を有していないはずである。
速度系に属するものでも、起風力にも係わらず精穀筒内に気流が流れ込むことは乙第一号証(特公昭三四-四七六五号公報)、乙第二号証(昭和一三年実用新案出願公告第一八四七七号公報)からも認められ、このことは圧力系に属するものでも同様であることは乙第三号証(実公昭三五-一二四五二号)に示されている。
以上のことを踏まえると、引用例の除糠装置においては、精穀筒と精穀転子との間の狭隙にも一部の空気が流れ込んでいるとせざるを得ない。そして、精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行うこと自体は常套手段であり、たとえそうでないとしても周知であるから、前記3冒頭記載の技術常識を考慮すると、本件審決の、「この間隙の広狭の差は、当業者が糠抜筒の内外両面の除糠除熱をどの程度行うかという必要に応じて随意に選定できる事項というべきである。」との判断に誤りはない。
第四 証拠関係
本件記録中の書証目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願考案の要旨)及び三(本件審決の理由の要点)は当事者間に争いがない。
二 本願考案について
原本の存在及び成立について当事者間に争いのない甲第三号証の三(本願図面、本判決別紙本願図面)、甲第四号証の二(本願明細書)によれば、本願考案の目的、構成及び作用効果は次のとおりであることが認められる。
1 本願考案の目的
本願考案は、六角筒形の多孔の糠抜筒内で横型転子が回転し、六角筒形糠抜筒の隅角部に穀粒を停滞させて摩擦し、除糠除熱しつつ精白するものである。
精穀機による穀粒の精白作用は速度系と圧力系に分類できる。・・・(中略)・・・圧力系とは、精白筒の排出口に圧迫蓋を取り付けて、排出口に向け移動する穀粒を圧迫し、精白間隙内の穀粒を転子により撹拌し、穀粒を互いに摩擦して精白する。したがって、精白転子の回転速度は低速で、精白間隙は広くさせて穀粒を重合させ、粒子を互いに摩擦させる。特に多孔の糠抜筒のような精白筒を六角筒にすると、隅角部の広い精白間隙中に多数の穀粒が停滞して撹拌されるから、摩擦を促進して都合がよい。しかしながら、圧力系の精白作用によるときは、摩擦熱が発生して穀粒が破砕したり、胴割れ米を生ずる欠点があるので、精白中の穀粒に風を通して除熱する必要がある。このような知見から従来噴気精穀機と称して中空横型転子の内部より空気を噴出して精穀中の穀粒を除糠除熱するものがある。
しかしながら中空転子は製造が困難で、機構も複雑となる欠点がある。本考案は中空転子によることなく精白中の穀粒に空気を吹き付けて除糠除熱することを行うことを目的とする(甲第四号証の二、一頁一五行から三頁一五行まで)。
2 本願考案の構成
請求の原因二(本願考案の要旨)のとおり(本判決別紙本願図面参照)。
3 本願考案の作用効果
六角筒形の糠抜筒1の上位の隅角部における左右の傾斜面1a、1aと集糠用覆箱5の上部に設けた吸気口8との間に、両裾に空気の通過を妨げる狭小な間隙Mを有する空室Sを設けたので、吸気口8より吸引された空気は空室S内に吹き溜り、大部分の空気は糠抜筒の穀粒の密度の粗なる上位の隅角部を経て内部を通過するので、六角筒内における広い摩擦精白間隙中の穀粒の発生する摩擦熱及び糠をよく除去するのみならず、糠抜筒1の上部左右の傾斜面1a、1aのなす隅角部は空室S内に突出するので、隅角部内の広い内部に停滞する穀粒の摩擦熱を速やかに除去して砕米、胴割れの発生を防止する。
しかも空室S内における残部の空気により、糠抜筒の上位の隅角部における左右の傾斜面1a、1aの上面に押し出た糠を左右の間隙Mを通して分離する。・・・(中略)・・・
このように、本願考案によるときは、単に糠抜筒1の外周上部に吸気口8に通ずる空室Sを形成することにより従来の中空横型転子のような複雑な機構によることなく横型精穀機における摩擦精白中の穀粒をよく除糠除熱し、砕米や胴割れ米の発生を防止し、歩留まり良好な糠の付着しない美麗な米に仕上げるという効果を生ずる(甲第四号証の二、六頁一五行から八頁二行まで)。
三 引用例記載の考案について
成立について当事者間に争いのない甲第五号証によれば、引用考案の技術課題、構成及び作用効果は次のとおりであることが認められる。
1 引用考案の技術課題
従来、横軸又は斜軸に装架した多孔壁精穀筒は精白室内から筒外に噴出する糠粉がその屋根面に堆積して多孔壁の孔を目潰して除糠作用を停止する欠陥がある(甲第五号証一頁右欄二行から五行まで)。
2 引用考案の構成
多孔壁精穀筒1を包蔵する外枠壁2の天井壁3を開設した通気窓4に連接して精穀筒1の胴周面の屋根5に沿い屋根5と通気狭隙6を形成する空気誘導壁7を開閉式扉状に綴結装架した精穀筒の空冷除糠装置(甲第五号証の登録請求の範囲の欄、本判決別紙引用考案図面参照)。
3 引用考案の効果
多孔壁精穀筒1の屋根5の面に噴出する糠粉を通気窓4から吸入する気流により精穀筒1の両側下方に吹掃し、常に精穀筒の多孔壁面を清潔に保ち除糠作用を安全に持続せしめ、又狭隙6の通気により能く精穀筒1を空冷して低温精白を助けると共に、必要に応じ誘導壁7を開き屋根5の面を軽便に点検あるいは整備できる効果がある(甲第五号証一頁右欄六行から一二行まで)。
四 認定判断の誤り第1点について
前記三2、3の事実によれば、引用例の通気窓4は「外枠壁2の天井壁3を開設した」ものとされ、通気窓4から気流を吸入するものとされているのであるから、この天井壁に開設された開口部は本願考案の吸気口に相当する。
そして、前記甲第三号証の三及び甲第四号証の二によれば、本願考案では、吸気口と糠抜筒の上位の外側面との間に形成される空間を空室と称していることは明らかである。
右三認定の事実及び前記甲第五号証によれば、引用例の第2図に示された、多孔壁精穀筒1の上位の円筒面と、天井壁3に開設した通気窓の開口部(吸気口)との間には、垂直に並行する二枚の板状の仕切によって画成された空間が存在し、この空間は空室と呼ぶことができる形状を備えたものであることが認められる。
右各事実によれば、引用考案の第2図に示された前記の空間を、本願考案の空室に相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
したがって、本願考案と引用考案は、糠抜筒(多孔壁精穀筒)の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成する点で一致する旨の本件審決の認定に、一致点の誤認あるいは相違点の看過はない。
原告は、本件審決が引用考案の空室として認定した箇所は、本願考案の吸気口8に相当し、本願考案の空室Sとは相違する旨主張し、前記甲第五号証によれば、引用例には「空気誘導壁7は蝶番18により通気窓4に綴結装架する。」(甲第五号証一頁左欄一五行から一六行まで)との記載があることが認められ、引用例においては、引用例の第2図に示された蝶番18、18を有する左右の垂直に並行する二枚の板状の仕切によって囲まれた部分全体が「通気窓4」とされているようにみえるが、引用例にどう称されているかにかかわらず右の垂直に並行する二枚の板状の仕切によって囲まれた空間は空室と呼ぶことができる形状を備えたものであることは前記のとおりであり、原告の主張は採用できない。
また、原告は、本願考案の空室Sは、糠抜筒の上位の外側面と吸気口との間に位置し、しかも空気の通過を妨げる狭小な間隙Mを備えた構成だから、吸気口より吸入した空気の大部分を糠抜筒の外側面より糠抜筒内に導入する作用を果たすのに対し、引用例の通気窓4(本件審決のいう空室)は、その下端開口部の左右に空気誘導壁7を連結し、この空気誘導壁7により形成する左右の通気狭隙6に導通する構成だから、通気窓4の上端開口部より吸入した空気はその全部が下端開口部を経て左右の通気狭隙6に流れ、糠抜筒内には進入しないという相違がある旨主張する。
しかし、糠抜筒の上位の外側面と吸気口との間に位置することは、引用考案の空室も本願考案のそれと同様であり、糠抜筒の上位の外側面と集糠用覆箱の内側との間に形成される狭い間隙の相違は、本件審決が相違点(二)として認定し、これについて判断しているところであり、本件審決の、糠抜筒(多孔壁精穀筒)の上位の外側面と吸気口との間に空室を形成する点で一致する旨の認定に原告主張の誤認はない。
五 認定判断の誤り第2点について
1 前記三(引用考案について)の認定によれば、引用考案は、精穀筒の屋根の面に噴出する糠粉を通気窓から吸入する気流により精穀筒の両側下方に吹掃すること及び狭隙の通気により精穀筒を外側から空冷するものであることは認められるが、前記甲第五号証によれば、引用例には、引用考案の精穀筒を空気が通過するか否か及びその空気によって精穀筒内部を冷却することについて明文の記載はないことが認められる。
本件審決が、引用考案において、一部の空気は精穀筒(糠抜筒)を通過すると認定しているのは、引用例には明文の記載はないが、引用例に記載された装置の構造及び当業者にとって自明の事項から一部の空気は精穀筒を通過すると認定した趣旨と解される。
2 前記甲第四号証の二及び成立について当事者間に争いのない甲第六号証(農業機械学会編「改訂農業機械ハンドブック」昭和四四年一一月三〇日株式会社コロナ社発行)によれば、精穀機は、その精白作用によって大別すると、速度系(研削系精白作用)のものと圧力系(摩擦系精白作用)のものとがあること、速度系は、金剛砂ロール(精穀転子)を周速度毎分六〇〇m以上の高速で回転させて、転子表面の研削力により穀粒のぬか層を研削するもので、精穀転子とこれを囲む精穀筒との精白間隙は狭く、一〇mm前後であること、圧力系は、外周に、軸方向に平行又は極端に大きなピッチのねじ状の突条のある精穀転子を周速度毎分三〇〇m以下の遅い速度で回転させて、精穀筒の排出口に設けた圧迫蓋等の圧迫力により穀粒に圧力を加え、穀粒相互の接触摩擦力でぬか層を薄片状に取り除くもので、精白間隙(精穀転子と精穀筒との間隙)は、穀粒同士が重なり互いに摩擦し合えるように広く形成することが認められる。
前記二1認定の事実によれば、本願考案は右の区分からいえば、圧力系の精穀機についての考案であることは明らかである。
また、引用考案が速度系の精穀機のみならず圧力系の精穀機についての考案でもあることは当事者間に争いがない。
したがって、引用考案が速度系の精穀機についての考案であることを理由として、引用考案の場合精穀筒の孔の通気抵抗が大きいということはできない。
3 本願考案において、左右の傾斜面の下端外側と覆箱の内側との間に形成される狭小な間隙Mは、空気の通過を妨げるものとされているが、前記二(本願考案について)3に認定したとおり、空室S内における残部の空気により、糠抜筒の上位の隅角部における左右の傾斜面1a、1aの上面に押し出した糠を左右の間隙Mを通して分離するものとされているのであるから、狭小な間隙といっても、少なくとも糠抜筒の上面に押し出された糠がそれを吹掃する空気と共につまることなく通過するだけの広さがあるものと認められる。
他方、引用考案においては、前記三(引用考案について)認定のとおり、通気狭隙6は精穀筒1の屋根5の面に噴出する糠粉を気流により精穀筒1の両側下方に吹掃する作用をする箇所であるから、少なくとも精穀筒の上面に押し出された糠がそれを吹掃する空気と共につまることなく通過するだけの広さがあるものと認められるが、それ以上の限定はない。
したがって、間隙(通気狭隙)の下限についても、本願考案の間隙Mは、左右の傾斜面の下端外側と覆箱の内側との間に形成されたものであるのに対し、引用考案の通気狭隙6は、精穀筒の胴周面の屋根に沿って形成されたもので、引用考案の通気狭隙の方がやや長いことから、糠のつまりを防ぐために幾分引用考案の通気狭隙の方が広いとしても、両者の通気抵抗の間に顕著な差がない場合もあるものといわなければならない。
4 ところで、入口と出口が共通し、通気抵抗が異なる二つの流路を想定したとき、出口側から吸気すると、入口から出口に至る気流は、それぞれの流路の通気抵抗に応じて配分されることが技術常識であることは当事者間に争いがない。
本願考案において、相対的に通気抵抗の小さい糠抜筒を大部分の空気が通過し、相対的に通気抵抗の大きい間隙Mを少量の空気が通過することにより、前記二、3認定の効果を奏するものである以上、引用考案が、本願考案と同じ圧力系の精穀機に適用され、かつ、通気間隙が下限に近い狭さに絞られている場合であっても、引用考案においては、実質的に全ての空気が通気狭隙を通過し、精穀筒を通過する空気は実質的にはないというのは不自然であり、通気間隙及び精穀筒内の通気抵抗に応じて配分された量の空気は精穀筒内に流入するものと認められる。
したがって、引用考案において、空気の通過を許容する間隙6が狭い以上、全部の空気が間隙6を通過するものではなく、一部の空気は糠抜筒を通過するものと認めるとの本件審決の認定は正当で、原告主張の誤りは認められない。
5 また、精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行おうとすることは技術課題としては周知であることは原告の認めるところである。
成立について当事者間に争いのない乙第一号証(特公昭三四-四七六五号公報)によれば、昭和三四年六月九日に公告された同号証には、速度系の精穀機において、排風機の吸引力により吸風套に連設した多孔壁筒の壁孔を通して精白室内穀粒層間を流通した空気を熱と糠とを伴い吸い出し穀粒の空冷除糠を行う技術及び吸風套の風速が多孔壁の通気抵抗のために吸風套内の糠粉量を清掃するに充分でない場合があるので、必要によっては多孔壁筒内を通過しないで吸風套に通ずる適宜の補気孔を設け、糠粉の停滞しやすい部分の風速を増す技術が開示されていることが認められる。
また、成立について当事者間に争いのない乙第二号証(昭和一三年実用新案出願公告第一八四七七号公報)によれば、昭和一三年一二月三日に公告された同号証には、速度系とみられる精穀機において、排気ポンプで吸引することにより透孔から侵入した外気が精穀機の内胴の精白転子の間隙を上方から下方へ流れて胴内を冷却しつつ内胴の底部の打抜網面から除糠する技術が開示されていることが認められる。
更に、成立について当事者間に争いのない乙第三号証(実公昭三五-一二四五二号)によれば、昭和三五年六月七日に公告された同号証には、圧力系の精穀機において、吸風機の作用によって外胴の上部開口から吸入された空気が、円筒目板精穀胴上部から精穀胴内を通って、精穀胴の外周の外胴との間の空室に吸い出され除糠する技術及び精穀胴内を通過する空気量を減少させる場合は、外胴の上部開口部で外胴と精穀胴の間隙を閉塞している遮板枠を引き上げて、空気の一部を精穀胴外周を通らせる技術が開示されていることが認められる。
右乙第一号証ないし乙第三号証に開示された技術及びその公告の時期並びに前記精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行おうとすることは技術課題としては周知であることによれば、本願出願当時、精穀機の精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行うことは当業者にとって周知の技術であったものと認められる。
6 したがって、前記1認定のとおり、引用例には、引用考案の精穀筒を空気が通過するか否か及びその空気によって精穀筒内部を冷却することについて明文の記載はないけれども、前記4認定のとおり、引用考案において、全部の空気が間隙6を通過するものではなく、一部の空気は糠抜筒を通過するものと認められ、かつ、前記5認定のとおり、精穀機の精穀筒内に空気を通すことにより除糠除熱を行うことが本願出願当時当業者にとって周知の技術であったことからすれば、引用考案において糠抜筒を通過する空気は精穀筒内部を冷却するものであることは当業者にとって自明である。
そして、前記4冒頭のとおり、入口と出口が共通し、通気抵抗が異なる二つの流路を想定したとき、出口側から吸気すると、入口から出口に至る気流は、それぞれの流路の通気抵抗に応じて配分されることが技術常識である以上、本件審決の「本願考案と引用考案との間には間隙に広狭の差があるものの、この間隙の広狭の差は、当業者が糠抜筒の内外両側の除糠除熱をどの程度行うかという必要に応じて随意に選定できる事項というべきである。」との判断は正当であり、原告主張の誤りは認められない。
六 よって、その主張の点に違法があることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 元木伸 裁判官 西田美昭 裁判官 島田清次郎)
別紙 本願図面
<省略>
別紙 引用考案図面
<省略>